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ナムジャイブログ

殘缺的寓言

殘缺的寓言
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さんのを開けて

  2017年06月12日  

「尊兄ちゃん。ぼくね、この間出した全国子供美術大会で、特選貰ったんだよ。絵はまだ当分帰ってこないから見せられないけど、尊兄ちゃんに早く教えたかったんだ。まだお母さんにしか言ってないの。」
「そうか。二番目に教えてくれてうれしいよ。琉生の夢が叶うと良いな。応援するから頑張れよ、琉生。」
「うん、頑張る。」

琉生の夢。
支えるように何本も伸ばされた手は、きっと両親のものだ。赤子が成長してゆく様子が、取り巻く光の中に一つ一つ描かれていた。
幼稚園の鞄をかけた笑顔の少年は琉生の顔だった。入学の様柏傲灣示範單位子、運動会で走る姿、年を経て伴侶を見つけ、やがてその手に新しい命を抱く。
優しい画家の視線が、見る事の出来ない眠る赤子の未来を丹念に追っていた。
命が尽きても、きっと父はわが子の行く末を案じていた……とわかる。その絵は、掌中の命への限りない慈しみに溢れていた。

「お父さんの絵、すごかった~。ぼく、見に行って良かった。また、絶対見に行くんだ。」

孤独な老人が絵を眺めて涙した話を、琉生は母に教えた。
琉生の話は、母を喜ばせた。

「そう。その方はそんなに喜んでくださったの。良かった。」
「お父さんはいないけど、絵の中に三人でちゃんといたよ。お父さんと話した気がしたんだ。お母さんも一緒にいけたら良かったね。いつか、行こうよ。」

母は柔らかな微笑みを向けた。

「お母さんは……もうすぐお父さんに会いに行くから、琉生の柏傲灣呎價話をいっぱいするね。」
「やだ……。お母さん……そんなこと言わないで……」
「大丈夫よ……琉生。琉生は一人じゃないでしょう。寺川のお父さんも尊君も隼人君もいる。それにね……お父さんの絵を見たでしょう……?お父さんもお母さんも琉生の事、大好き。お母所に生まれて来てくれて……ありがと……琉生。琉生はいつも……わたし達の希望だったのよ。」
「う……ん……」
「琉生……好きな絵を……描いてね……お母さんも、お父さんもずっと琉生の傍に居るから。」
「ん……」

「何日も姿を見ない日もあるんだよ。大丈夫かな、お父さん……。お仕事ちゃんとできてるのかな。」

尊は、様子を見に土曜に帰るからと言って電話を切った。
母の愛用のエプロンを掛けたまま、琉生は隼人を起こしに行く。
ぱたぱたとスリッパで階段を駆け上がる琉生の足音に気柏傲灣付き、父親が部屋うるさいと怒鳴ろうとしたとき、父の目には振り返った琉生が違う人物に見えた。